東北大学 未来科学技術共同研究センター
教 授
松岡 隆志

エキゾチック基板・プロセスの利用による光・電子デバイスの高性能化

基板探索

ZnO 基板上窒化物半導体のエピタキシャル成長

そこで、GaN に近い格子定数と同じ結晶構造をもつ酸化亜鉛 (ZnO) 結晶に着目しました。 ZnOの格子定数はIn0.17Ga0.83N と格子整合します。 また、ZnO 基板は製造方法から将来的にAl2O3 より安価に市場に供給されると考えられています。このZnO 基板を用いてのMOVPE 成長は、還元雰囲気において基板表面へのダメージが発生するために困難との報告があります。そこで本研究では、保護緩衝層を挿入することで高品質なエピタキシャル成長を行う技術を開発しています。またZnO 基板はn型基板が入手可能であることから、縦型伝導素子構造の実現を目指しています。

ScAlMgO4 基板上窒化物半導体のエピタキシャル成長

また、上記と同様にGaN に近い格子定数をもつScAlMgO4 (SCAM) を用いたエピタキシャル成長技術も開発しています。SCAM 結晶はc面で劈開することから、切断・研磨をせずに原子レベルで平坦な基板を作製することが可能です。

結晶成長技術

非極性・半極性窒化物半導体のエピタキシャル成長

従来の窒化物半導体素子は、(0001)面 (c 面、Ga 極性面とも呼ぶ) 上に作製されております。この方向には、巨大な分極電界が発生し、特に発光デバイスにおいて効率低下の要因となっています。本研究では発光デバイスの効率向上に向けて、非極性面や半極性面窒化物半導体のエピタキシャル成長を行います。青色・緑色・赤色の高効率LEDの実現を目指しています。

サーファクタント添加・選択成長による高品質化

サファイアなどの異種基板上へのヘテロ成長が必須である窒化物半導体は、格子不整合・熱膨張係数差により必然的に欠陥・歪と共存しなければならない材料です。加えて、非平衡度の高い雰囲気で結晶成長が行われるため、表面荒れが顕著に発生します。本研究では、サーファクタント添加、選択成長などを用いて、様々な面方位の窒化物半導体に対して欠陥低減・表面荒れ抑制を実現する成長手法を確立することを提案しました*2 *3