きっかけ


六方晶系のSiC基板上にGaNを成長したときに、図1に示す極性に気づいていました。
通常のエピタキシャル成長には、Ga極性成長が用いられています。このGa極性成長においては、結晶成長の最表面では1個のN原子が1個のGa原子に捕獲されます。一方、N極性では、1個のN原子が3個のGa原子に捕獲されることになります。そのため、N極性成長においては、N原子が捕獲されやすくなります。窒化物半導体InGaAlNを構成する3種の化合物半導体AlN、 GaNおよびInNのなかでは、InNの窒素の気相固相間平衡蒸気圧は他に較べて極めて高くなります。このため、InNは結晶中に最も取り込まれにくいことになります。本研究室では、GaNのN極性成長を世界で初めて実施してきました。
T.Matsuoka, T. Mitate, H. Takahata, S. Mizuno, Y. Uchiyama, A. Sasaki, M. Yoshimoto, T. Ohnishi, and M. Sumiya, "N-Polarity GaN on Sapphire Substrate Grown by MOVPE", Phys. Stat. Sol. (b), 243, 1446 (2006).
この技術を活かして、今後の研究を進めたいと考えております。具体的には、下記の項目を考えております。
InリッチInGaAlNの成長
InN近傍におけるInGaAlNを成長し、その物性を調べる。
分極方向が反転することのデバイスへの応用
Ga極性とN極性の結晶では、図1に示しますように、分極の方向が反転します。この特長を活かしたデバイス応用を考えていきます。例えば、太陽電池に応用すると、表1に示しますように素子特性が大幅に向上します。
結晶方位と分極方位 | 太陽電池のバンド構造 | キャリア引き出し | |
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Ga極性(Ga面) | ![]() |
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i層(受光層)の内部電界が、分極によりキャリア取り出し方向と逆になる。このため、生成キャリアの拡散が阻害される。 |
N極性(N面) | ![]() |
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i層(受光層)の内部電界が、分極によりキャリア取り出し方向と同じになる。このため、生成キャリアが容易に分離し、取り出せる。 |
バルクGaN結晶成長への挑戦
Ga極性成長では、膜厚の増大とともに、先細りしながら成長します。一方、N極性成長では、反対に太くなりながら成長します。この現象は、高耐圧・高出力縦型トランジスタ用GaN基板の作製においては、工業的に向いています。